酔っ払って足元がふらついていることを、千鳥足(ちどりあし)と言いますよね。
千鳥足はまさに「チドリ」からきています。鳥類の足は普通後ろを支える指がありますが、チドリの指は前3本しかないためよろめいたような歩き方をします。その動きに似ていることから千鳥足と呼ばれるようになったという説、またチドリが右に左にジグザグで歩いたり、足を交差させたりすることからそう名付けられるようになったという説などもあります。
今日はチドリ科の中でも割と見つけやすいコチドリについて紹介していきます。
コチドリの特徴
中流域の川原、空き地で繁殖
川原や干拓など水辺の鳥です。街中ではまず見ることができません。
スズメほどの大きさ
野鳥図鑑には16cmと書かれています。特徴としては目の周りに黄い輪(アイリング)があり、首には首輪のような黒い線があります。英名ではLittle Ringed Ploverといいますが。アイリング、首のリングのことを表しているのでしょうか。大田区の東京港野鳥公園に行くと必ず会えるのですが、干潟にいるので近くに寄ることができません。遠くに見つけても双眼鏡がないとわかりません。また動きが早いのですぐにフレームアウトする。
ましてやコチドリ?イカルチドリ?など肉眼で見分けるのは至難の技です。
夏鳥
コチドリは夏鳥です。ユーラシア大陸に広く分布していて、夏に日本にやってきて、九州から北海道で繁殖します。チドリ科は旅鳥や冬鳥が多いのに、夏鳥というのは珍しいです。
鳴き声「ピュィ」
「ピュィ」と鳴きます。繁殖期には細く澄み渡る声で「ピョオピョオ、ピヨピヨ」とさえずります。
巣は地上に作る
巣は川原や空き地など広々としたところに産卵します。
ヘビやイタチなどの天敵にも狙われやすいのですが、コチドリは「擬傷」と言って、敵の注意をヒナから外すために親鳥が怪我したフリをします。敵をできるだけ近づけておいて、いよいよ襲われそうになるとヒラっと飛んで逃げるのです。ただこれは命がけで、タイミングを誤って実際に敵に捕まってしまうこともあります。
名前の由来
チドリは100羽、1000羽の大群を作ることから水辺にいるたくさんの鳥という意味で「千鳥」と名付けられたと言われています。
万葉集には「ちどり」の登場する歌が25首もあります。ただそのチドリがコチドリだったのか、イカルチドリだったのか、シロチドリだったのかは、今となってはわかりません。
千鳥饅頭で有名な福岡の和菓子屋、菅原道真の詠んだ歌からきています。千鳥模様の入ったおまんじゅうは有名ですよね。千鳥文様は日本の伝統的模様で、「千取り」に通じ、勝利や豊さを表すめでたい模様とされています。「波千鳥」という模様は昔から着物のモチーフなどにも用いられてきました。波(困難)を避けて仲良く飛ぶ千鳥を表していて、夫婦の絆や家内安全を象徴する意匠です。
コチドリ・イカルチドリ・シロチドリの違い
冒頭で紹介したように、チドリは見分けるのがとても難しい鳥です。もし双眼鏡で見れる機会があったらぜひチェックしてみてください。コチドリとイカルチドリ、シロチドリの違いは以下の4つが見分けるポイントです。
・アイリング
・首の周りの黒い輪
・足の色
・広げたときの白い線
目の周りの黄色い輪 | 首周りの黒い輪 | 足 | 羽に白い線 | |
コチドリ | 濃いアイリング有り | 太い輪 | 黄色 | なし |
イカルチドリ | 目立たない | 細い輪 | 淡い黄色 | あり |
シロチドリ | ない | 前で途切れる | 黒 | あり |
コチドリから思いを馳せて
コチドリについて調べているうちに面白いことに気づきました。先にも書きましたが、万葉集に千鳥を含む歌が25首もあります。それだけ、日本人にとって昔から身近でなじみのある野鳥であるということだと思います。
残念ながら、僕がこれまで住んだ京都や杉並区の街中では千鳥に出会う機会はありませんでした。地元京都の賀茂川では、出会っていたかもしれませんが、当時の私は興味がなく、もし見たとしても気づいていませんでした。
今回「コチドリ」に興味を持ち、色々と知識を深める中で改めて「千鳥」のことを知りました。昔から千鳥は日本人の文化の中に溶け込み、親しまれてきていたということを野鳥観察をきっかけに知りました。鳥類の知識や野鳥観察にとどまらず、歴史や地理、伝統や文化など多岐にわたって興味が広がるバードウォッチング、奥深いなあと思いました。