港や湾岸、沿岸、河口、干潟などの海辺でよく見かけるカモメ類。あなたが出会った野鳥は本当に「カモメ」だったのでしょうか?「えっ!?」と思われた方。あなたが出会った野鳥は「ウミネコ」かもしれません。むしろ可能性は高いと思います。今日はそんな「日本の海辺の代表種‐ウミネコ」についてお話していきたいと思います。
「カモメ」と「ウミネコ」の関係
カモメ科カモメ属のウミネコは日本近海にしか生息していない種ですが、数も圧倒的に多く頻繁に見かける野鳥です。
一方、同じカモメ科の代表種[カモメ]は東アジアからユーラシア大陸、北ヨーロッパ、地中海沿岸、北米の太平洋岸まで広く分布しているため世界的に見ると圧倒的にメジャーな野鳥です。しかし数があまり多くないため、日本で出会うチャンスは意外と少ないのです。
ウミネコとの出会い
私がウミネコに初めて出会った(意識してわかるようになった)のは江東区の海岸でした。他のカモメとの特徴の違いがはっきりしているので明確に識別できました。
以下に特徴と他のカモメ類との見分け方をご紹介します。
ウミネコの特徴
クチバシと尾羽
日本でよく見かける中・大型カモメ類には下記がいますが、ウミネコの特徴はずばりクチバシの模様と尾羽の黒い帯です。何よりも他の大型カモメ類が冬鳥なのに対してウミネコは留鳥ですから、夏場に出会ったカモメ類ならばほぼ断定しても差し支えないと思います。
海辺でカモメ類に出会ったらクチバシと尾羽の色を良く観察してみましょう!イラストにも描いていますがカモメ類は翼が長いので羽を閉じた状態では翼の方が先です。(尾羽のほうが短い) イラストではややわざとらしく書いていますが実際の尾羽はとまっている状態だと少し見づらいです。できれば飛んでいるところをチェックするのが良いと思います。
ちなみにカモメ類は成鳥になるまでに3~5年ほどかかります。幼鳥は茶色っぽい色ですぐわかりますが、種の識別はさらに困難になります。
カモメの見分け方
大きさ | 季節(本州以南) | 尾羽 | クチバシ | 足 | 一言 | |
ウミネコ | 45cm | 留鳥 | 明瞭な黒い帯 | 先端に黒と赤の斑がある | 黄色 | 顔が怖い |
カモメ | 42cm | 冬鳥 | 白 | 黄色 | 黄色 | めずらしい |
ユリカモメ | 41cm | 冬鳥 | 白 | 赤 | 赤 | 内陸にも多い |
セグロカモメ | 61cm | 冬鳥 | 白 | 先端下部のみ赤斑 | 薄ピンク | オオセグロカモメよりも背が薄い(灰色気味) |
オオセグロカモメ | 61.5cm | 冬鳥 | 白 | 先端下部のみ赤斑 | 薄ピンク | セグロカモメよりも背が薄い(黒色気味) |
鳴き声
その名の通りネコのような鳴き声で有名です。「ミャー!ミャー!」とか、「アー!、アー!」みたいな大きな声で鳴きます。
ただし、他のカモメ類も似たような声で鳴きますので過信は禁物です!わりと騒がしい感じなのでうるさいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
会える季節
留鳥です。本州以南では通年で出会えます。多くのカモメ類は日本では冬鳥になりますので、夏に海辺で出会ったカモメ類ならほぼウミネコで間違いなしですね。ちなみに、北海道では夏鳥です。
名前の由来
元は海猫鷗(読み方・ウミネコカモメ)が転じてウミネコになりました。ご存じのように鳴き声が猫に似ているため命名されました。
ちなみに、英名は「Black tailed Gull/黒い尾のカモメ」先に書いた尾羽の特徴から来ています。おもしろいいことに、英名で「Mew Gull/ネコカモメ」(猫の鳴き声を英語でMew・ミューと言います。)という種がいますが、これが日本では「カモメ」です。ウミネコは日本とその近海にしか生息していないため、英語圏でネコに似た鳴き声のカモメと言えば「カモメ」になるんですねー。
ネコ好きにはたまらない?
ウミネコ。かわいいですかね?私は少々顔が怖いと思っています。ネコ好きの方には恐縮ですが、ネコの顔も結構怖いかなと・・・。それと似た印象です。声だけでなくルックスもウミネコって感じです。死んだ魚や動物をくわえる姿もまたネコに通じる気がします。まさに海の猫だと。私はなんだか妙に納得しています。
ところで、「ものさし鳥」という野鳥を識別するための4つの代表種をご存知でしょうか?
水辺のものさし鳥
スズメ、ムクドリ、ハト、カラスがそれにあたりますが、私としてはカルガモと、このウミネコをこの概念に入れてはどうかなと思っています。この2種は留鳥ですので年中観察できるだけでなく、おおよそ日本全国で観察できるので「水辺の物差し」にピッタリではないでしょうか。
カモメ類はどれもよく似たルックスですが、ぜひ今日からこのウミネコを目印にカモメ類の識別にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?