ツバメ、子育ての象徴

ツバメ イラスト

ツバメの季節

先日善福寺川沿いを散歩しているとツバメが「ツーッ」と飛んでいきました。もうツバメの季節だな、と春を感じました。ツバメは他の野鳥と比べて、飛び方だけで「あ、ツバメ!」とわかります。羽ばたかず、紙飛行機のように飛ぶ姿が印象的です。

ツバメは身近な鳥

ツバメは日本人にとって身近な野鳥です。民家やガレージの軒先に巣を作り子育てをします。人の近くに巣を作ることで、カラスやヘビなどの天敵から卵や雛を守れるというメリットがあります。人間はツバメが巣作り始めると囲いをしたりして見守り、雛がかえると親鳥が何度も何度も雛のために餌を運ぶ姿をずーと眺めたり。縁起がよい「幸運を呼ぶ鳥」として親しまれています。甲斐甲斐しく子供の世話をする姿が温かいファミリーの象徴だからでしょうか。農作物に害を与える昆虫を食べてくれるため、その意味でも益鳥としてプラスのイメージで捉えられています。

ツバメの特徴

ツバメは他の野鳥と違う特徴がいくつかあります。ご紹介していきます。

燕尾(えんび)

深いV字切り込みの入った尾の形をしています。オスの尾はメスより細長いです。燕尾服もツバメの尾に似ているからついた名前ですね。お尻を見せるのは失礼という考え方があり、正式な席ではおしりを隠すために考えられた服だとか。指揮者の方は観客にお尻を向けて立つので燕尾服を着るのはそういった理由があるのでしょうか。

ツバメにもアマツバメやイワツバメなどがいますが、燕尾はツバメとコシアカツバメだけの特徴です。他のツバメ科との識別ポイントでもあります。

飛ぶのが上手い、速い

ツバメは飛んでいる姿で識別できる珍しい野鳥です。直線的な飛び方、時速200kmも出るというそのスピード。新幹線や特急列車にも名前が付けられるのも納得ですね。

体の色

お腹は白、背は黒、額とのど赤茶色です。首に黒いラインがあります。

鳴き声「チュビチュビチュビーッ」

ツバメのさえずり(繁殖期の鳴き声)は「チュビチュビチュビーッ」です。最後の音が濁るのが特徴です。

“聞きなし”ってご存知ですか。鳥の鳴き声を人の言葉に当てはめることなのですが、ツバメの聞きなしは「土食って、虫喰って、渋ーい」です。

ちなみに地鳴き(普段の鳴き声)は飛び立つときに「チュビッ」です。

東南アジアから春に渡ってくる夏鳥

ツバメは年中日本にいるわけではありません。春から夏のあいだだけ日本にいる夏鳥です。

繁殖のために渡ってきて、秋ごろにまた東南アジアへと戻っていきます。

ツバメの子育てはまず巣の用意です。泥を材料にしたお椀型の巣を作ります。だいたい1週間くらい、古巣の補修なら2日ほどで済みます。卵を一度に3~7個生み、2週間でかえります。そのあとは、20~24日餌を与え続けます。1日数100回も昆虫を何度も何度も雛の口に親鳥は運び続けます。

5~6月虫が増える頃が子育ての時期で、だいたい1年に2回、連続で子育てをします。渡り前に若鳥と親鳥がヨシ原のねぐらに集合、大集団となって東南アジアへ戻っていきます。

ツバメはヒナの姿を身近で見れる希少な野鳥かもしれません。

ツバメあれこれ

英語でbarn swallow

直訳すると「納屋のツバメ」と言った感じでしょうか。swallow以外にもswiftもツバメを表す単語です。swiftは素早いという意味もありますね。

ヤクルトスワローズ

プロ野球の東京ヤクルトスワローズにもツバメが入っていますね。ヤクルトは元国鉄スワローズ、当時の特急列車「ツバメ号」に由来しています。球団旗には列車のヘッドマークに使われていたツバメのマークが使われているそうです。

佐々木小次郎の燕返し

宮本武蔵の好敵手、佐々木小次郎の必殺技のことです。「もし飛んでいるツバメを斬る事が出来れば、師匠を抜く事が出来るかもしれない」と毎日ツバメに挑み続けたそうです。そしてある日ツバメを斬ることができたそうです。その経験から編み出した奥義が燕返しと言われています。

渡り鳥だけど日本の鳥というイメージ

お話したように、ツバメは東南アジアをベースに世界を旅する鳥です。日本には春夏だけしか滞在しません。それなのにとても馴染みがあって身近なイメージのツバメ、渡り鳥だけど、日本の鳥というイメージがあるのは私だけでしょうか。

私が幼い頃はツバメの巣は結構目にしていましたが、最近は巣を見かけることも少なくなりました。都市部で巣を作りにくくなったことが理由とか。巣の材料となるわらや泥が少なくなったこと、また軒先に作った巣を嫌がって撤去する人もいること。なんとも寂しい話です。もし家の軒先にツバメが巣を作った日には、一日中見てしまいそうです。

参考:日本野鳥の会「人の暮らしと共にある、ツバメの子育てを見守ろう

長女が年少組だったころ、幼稚園の最寄りのバス停でバスを待っているとき、バス停前の家の軒先にちょうどスズメの巣がありました。大きく口を開けてエサを待つヒナに、親鳥が何度も何度も餌を運ぶ様子を、娘とずーと眺めていた思い出があります。数台バスを見送ったかもしれません。そんな思い出もあり、私にとってもツバメはとても愛おしい野鳥です。

ツバメ イラスト
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